5-墾丁で私は女になる

私はFACEBOOKで台湾人の友人が繁華街で楽しそうに
ピースしながら写っている一枚の写真を見た。

そこは、どこかハワイのようなリゾート地らしい。

写真の背景には漢字が見えるから、恐らく台湾なのだろう。
ここは一体どこなんだろうか。
台湾にそんなリゾート地があるのだろうか。

さっそく友人に聞いてみると、
そこは台湾最南端にある『墾丁』という街らしい。
興味を持った私はさっそく台北からバスに乗り6時間、
高雄に一泊し翌朝、墾丁に向かった。

高雄を出発してバナナ畑を眺める事3時間。

私はようやく墾丁に着いた。
台北からなんとバスで9時間である!

バスを降りるとそこは初夏。
少し肌寒かった台北が嘘のようである。
私はさっそく予約してあった阿飛サーフ・ゲストハウスに向かった。
ここはサーフショップ兼ゲストハウスである。

一歩ゲストハウスに足を踏み入れ、私はすぐさま逃げ出したくなった。
というのも、人を食いそうなくらい巨大な犬が
ゲストハウスの入り口で寝ていたのだ!!

こ・恐い!!!!!
私は小さい頃から不必要に大きな犬や猫が苦手なのだ。

私が大きな荷物を持ってそーっと中に入ろうとすると、
犬は私に気づいたのか重そうな体をのっそりと上げ私を睨んでいる。
殺られる!!!!私が生命の危険を感じた頃、
ゲストハウスの受付の女性がその犬は大丈夫ですよ、
まぁソファーにでも座ってゆっくりしてくださいと笑った。
どうやらこの犬は客を襲わないように訓練されているようだ。
ふー。あやうく死ぬとこだった。

ゲストハウスの女性は、まぁ座ってくださいと言ったきり
私を放置し、左手でPCをいじっては右手で電話している。
中には巨大な犬以外にも、中くらいの犬と
小さな犬がおり、見事に大中小である。
その犬様達は客が本来座るはずのソファーで
気持ちよさそうに眠っておられた。

そこには、なんとも南国のゆるい空気が流れていた。

私は荷物を置いて外に出た。
せっかくのリゾート地だというのに天気はあいにくの曇り空。
いつ雨が降ってもおかしくなさそうな空である。
台湾最南端の地、鵝鑾鼻や、国立公園など行きたいところは
たくさんあったが、雨に濡れながら観光するのも嫌だったので、
どうせ濡れるならとゲストハウスでサーフボードを借り
一日中サーフィンすることにした。

ゲストハウスから徒歩3分の南湾には
日本では台風の時くらいにしかお目にかかれない巨大な波が
数多くうちあがっていた。これは期待できそうだ!

巨大な波を前に興奮した私は、準備体操もせずに海に飛び込んだ。
日本では短いショートボードと呼ばれる
ボードにしか乗ったことがない私はゲストハウスで借りた
ロングボードとショートボードの中間に位置する
ファンボードに慣れるのに苦労した。

何度大波にもまれても、負けずに大波に立ち向かう私に
多くの台湾人は決して諦めない日本人精神を感じ、
目頭を熱くしたことだろう。
そんな私も二時間もすれば、波に乗れるようになった。

ここの波はとてつもなくでかい。
私は家の二階くらいの高さのどうしようもない大波を前に、
恐怖より先に笑っていた。
ひっきりなしにやってくる大波が私には楽しくてしょうがなかったのだ。

休憩もせずに5時間くらいサーフィンしただろうか。
あたりは次第に暗くなってきた。
気分的にはいつまでもサーフィンをしていたかったが、
暗くなり波を識別できなくなれば命の危険もあるので
次にきた大波で最後にすることにした。

しかし待てど待てど、これだ!という波はこない。
全て大きいには大きいのだが、「今日最後の大波」に
ふさわしい程の大波ではない。
20分くらい待っただろうか。遠くに大きな波が見えた。
この波は近づくにつれ周辺の波を飲み込み、さらに巨大化している!


これだ!
私はこの波に乗るために、墾丁までやってきたのだ!
私はこの波に乗るために、男として生を受けたのだ!
ここで逃げていては、私は女だ!!さー!行くぞ!!











でもやっぱ恐い。。逃げろ!!!!
ε=ε=ε=ε=ε=(*゚ロ゚)ノ










私は波の下に潜りその巨大な波を回避した。
もうサーフボードまで抱えて潜る暇はなかった。
私は巨大な波に揉まれ、ぐちゃぐちゃになった。
天と地が逆さになり自分が今
どこの方向を向いているかさえも分からない。
とりあえず波の中で頭を守るため手でガードした。
すると急に足が軽くなった。
私の足とサーフボードをつないでいた紐が切れたのだ。
まずい!!レンタルのボードが!!
私は大波に揉まれながらも命の心配よりレンタルボードを
紛失した場合の弁償金について考えていた。

気づいた時には、私は浅瀬に投げ出されており
ボードも幸い浜に打ち上げられていた。

紐が切れてしまった以上、今日のサーフィンこれで終わりだ。
私は最後に巨大な波に恐れをなして逃げてしまった。
なんとも情けない始末である。
私は、もはや男ではない。そう、今日から私は女の子よ!!!


サーフィンを終えたの私は墾丁で一番の繁華街に
夕飯を食べに行く事にしたわ。
まさに、私がFACEBOOKで見たあの写真の場所よ!

でも雨が降ってきたから夕飯を食べてすぐ
ゲストハウスに引き返したの。
私が引き返した頃には、ゲストハウスに誰もいなかったわ。
受付の女性さえも「なにかあったら電話してね」というメモを
残していなくなっていたの。

ゲストハウスは私と犬3匹しかいなかった。
私は犬と一緒に意味の分からない台湾のTVを見ていたの。
すると、急に入り口が開いてお客さんが入ってきたわ。
今着いたばかりだという西洋のお姉さん4人だったわ。
みんなとっても綺麗だったわ。
BEAUTIFUL GIRLSとでも呼ぼうかしら。
でもね、正直言うと、3 BEAUTIFUL GIRLSと
1 WOMENだったわ(失礼!)


でも、どうしようかしら。
私は真っ先に、私はここのスタッフではないと告げたわ。
じゃあスタッフはどこなの?と聞くから、
さぁ・・分からないわと答えたの。

私は置手紙の存在を思い出し、電話してみたら?と言った。
彼女のうちの一人は、そうね!と言い受話器を持ったわ。
英語で話すんだとばかり思っていた私は西洋人の彼女の口から
流暢な中国語が聞こえて驚いたのなんのって!

今時の西洋人は中国語を勉強するようになったのね。
聞くところによる彼女達4人は台北
中国語を学んでいる友達どうしらしいわ。

しばらくして受付の女性が帰ってきて、
「タワポンちゃん!あなたたちはもう知り合ったのね!
彼女達はあなたのルームメイトよ!」と言ったわ。
!!
私は彼女達と一晩過ごすのね!
女5人で夜を過ごすなんてとってもEXCITINGじゃない!!!!!

彼女達は私にギターで歌を歌ってくれたわ。
それはそれは綺麗な歌だったわ。
ギターケースの表にある小さな物入れには
プリングルズのポテトチップスが入っていて
私は思わず「欧米か!」って言っちゃったわ。
するとみんな「欧米よ!」というではありませんか!
私笑っちゃったわ!


(もうしばらくお付き合いください)


彼女達は明日のプランを練っていたわ。
中国語でサーフィンやスキューバダイビングのことを
受付の女性に聞いていたわ。
ほんとうに上手な中国語だったわ。
私、受付の女の人に思い切って聞いてみたの。
私の中国語と彼女達の中国語はどっちが上手いかって。
彼女なんて言ったと思う?

她们比较好。(彼女達のほうが少し上手よ!)

BEAUTIFUL GIRLS達はみんな笑ってたわ。
私は悔しくって悔しくって買ったばかりの
ミルクティーを一気飲みしちゃったわ!


(もうすぐ終わります)


そして夜12時くらいだったかしら。
彼女たちは寝る直前になって翌日、目覚ましをかけるか
かけないかで喧嘩を始めたわ。
そりゃ4人もいたらそれぞれのやり方があるわよね!
一人の女の子は、私は目覚ましで起こされると本当に不機嫌に
なるの・・・だから目覚ましは止めて!ってみんなに言うの。
でもね、気が強い一人の子は頑なに目覚ましをかける!って言うの。
そしたら目覚まし嫌いの子は、そんなだったら私はあなたと友達を
やめる!!と言い出すじゃない!場が凍っちゃったわ!

するとしばらくしてみんな笑い出したわ。
冗談だったのかしら。
でも私には当の本人はいたって本気に見えたわ。
そんな感じで私たち女5人の夜は更けていったわ。


翌朝私は早めに支度してゲストハウスを去ることにしたの。
予定がいっぱいだったからね。
私に遅れてBEAUTIFUL GIRLS達も起きてきたわ。
私は彼女達と一緒に写真を撮ろうといったわ。
彼女達は起きたばかりだったけど、嫌な顔せず写ってくれたわ!

そんな写真を次の目的地に向かうバスの中で見ていたの。

写真を見て私は急いでカメラの電源を切ったわ。
左の子の胸元に朝から見てはいけないものを見てしまった気がしたの。


でも電源を切って5秒後にはまた同じ写真を見ていたわ。
そして私はこう思ったの。



やっぱり私は男だと。